ひと夏の救い
「おはよ〜アッキー!」
「お、荒峰!おはよう!!」
「怪我は大丈夫か?」
「おは…眠い…」
登校日、玄関に女の子の集団がたまっていて騒がしいと思えば、案の定現れたわね。
4人は目が合うなり私に近寄ってきて話しかけてくるのに伴って周りの視線も私に突き刺さる。はぁって溜息をつきたくなるけれど、仕方がないかって諦めが着いてきた。
離れてから帰るまで澄晴以外とは会っていなかったから少し気まずい、なんて思っていたのが飛んでいくくらいいつも通りの変人達にむず痒い気持ちになったのが恥ずかしくて、思わず目を逸らしてしまう。
何とも思ってないみたい…怒って、無いのかな。
私の様子を見た木下君があっと気付いたように言った。
「お腹すいてんの?」
「違うだろ」
ヘンテコな言葉に東雲君がツッコミを入れる。おかしなやり取りにふっと笑ってしまったけれど、言わなきゃいけないことがある。
「あの………ごめんなさい」
「「「何が?」」」
「えっと、迷惑をかけて…」
「な〜んだそんなことか」
「そんな事って」
「良いんだよ、荒峰を助けられたんだから」
眠そうな顔をした奈良坂君が緩慢ながらこくこく頷いて東雲君に賛同する。
雰囲気から怒られないのが分かって困惑した。
怒っても貰えないのなら、私の迷惑はどう収集をつければ良いの…?
彼らに与えられる優しさに戸惑って澄晴を見ると、彼は悪戯そうに笑って言った。
「ごめんなさいより、聞きたい言葉があるんだけどな〜?」
他の皆に目を向けると、全員同じような顔をしてそれでも分かる優しい眼差しでこちらの言葉を待っている。
心の中がポカポカと温まって、自然と口から言葉が飛び出た。自然と緩んでしまう口と目元に胸中で驚きながら、それを自然と嬉しいと思った。
「ありがとうっ…」