ひと夏の救い
同じ様に木下君に捕まれた、
じゃない、
掴まれた奈良坂君は、
欠伸をしながら「良いよ〜」と
間延びした返事をして、
キラキラお目目攻撃を受けた東雲君は、
「危ない事をしないか心配だから仕方ない」
と
眼鏡の奥のつり上がった目の端を心無しか垂れさせて
頭に手を当てた。
それに満足そうに頷いた木下君。
「夜の学校、どうやって忍び込む?
なんだかワクワクするなぁ!」
その瞬間、
掴まれたままの腕を外そうと奮闘していた私は固まった。
目の端に澄晴も笑顔のまま凍りついてる姿が映る。
何となくもたついた様子で
澄晴が木下君を止めようとした。
「ま、まこっちゃーん?
それはちょっといけないことだか…」
「俺、夜の学校行ってみたかったんだ!
忍び込むっていうのも忍者みたいでワクワクするな!」
あははっ、と能天気に笑っている木下君は
澄晴の苦言なんて聞こえていないみたいだった。