ひと夏の救い
「澄晴、私は行きたくないって言ったはずなんだけど?
それにどうして私の家を知っているのよ。
怖いんだけど?」
「怖いだなんて失礼な!
俺はただアッキーの後をついてっただけだもん!」
「充分怖いだろ!何してるんだ澄晴!」
東雲君は常識があるみたいね。
当たり前よ!怖いわ!
そして、そう。わ・た・し・は!行く気なんて全っ然無かったのに!
家に帰ってからの事
「ただいま…」
誰もいない静かな無駄に広い家。
返事が無いって分かってたけど小さくそう言った。
自分の部屋に戻って高校三年生レベルの数学を予習して、
何となくベランダに出て暗くなってきた空を見上げてた。
そして一瞬、本当に一瞬だけ、
あの変人達は今頃校門に集まってるのかしら?
とか、ちょこっとだけ、思ったんだけど
見計らったみたいに、
「アッキー!迎えに来たよ〜!」
って聞き覚えのある声が
それはもう近所迷惑なくらい響き渡った。
嫌な予感…
見たくない、知らない人だわ
と脳内で繰り返しながら
そろそろと視線を下ろした。
…これ以上ないくらい、
満面の笑みの澄晴がそこにいましたとさ。はああぁ。