ひと夏の救い
「こんな七不思議あったっけ…ふぁ」
「なぁなぁ、これ、空き教室の方向いてないかっ」
「そんなこと…あるかも知れない」
「はははは、何言ってんの。
たまたまに決まってるじゃん!たまたま!ははは…」
「澄晴、しぃーだよ」
上から、奈良坂君、木下君、東雲君、澄晴、奈良坂君。
私の記憶が正しければ、
『血文字』の七不思議なんて無かった。
本当に木下君が言って初めて気付いたし、
…澄晴の言うように、
たまたま、なのかしら?
誰か七不思議を作っている人が
数を間違えたとか、
実は七つの内どれかに含まれているものなのか。
というか、
木下君が謎の発想力を発揮しているわ。
確かに頭は柔らかそうだけれど…
空き教室は今から行こうとしていた場所よね。
「やっぱりっ、
せっかく矢印が教えてくれてるんだし、
空き教室行こうぜ!」
「まぁ、どっちでも良いけど…」
「そうだな。皆、暗いから足下気を付けるんだぞ」
「さ、先行っていいよ。俺後ろ見張ってるからっなっ」
「澄晴、震えてない?」
「き気のせいだよ。
あっ、アッキーは大丈夫?
女の子だから怖いかもしれないけど、
お俺に任せてっ」
「…別に怖くないわよ」
チャラ男が一気にヘタレに格下げされたわ。
そんなこんなで、
私達は矢印に従って空き教室に向かった。