ひと夏の救い
「なんかそれっぽくなってきたよなっ。
幽霊でそうっ」
「こらっ誠。
懐中電灯は人に向けるな、眩しいだろう」
「あ、ねぇあそこ人の顔みたいだね?」
「えっどこ。あ、やっぱり教えてくれなくていいやっ」
そろそろと足音は静かだけど、
ずっと喋ってるから台無しね…はぁ
木下君は懐中電灯でいろんな所を照らして遊んでて、
東雲君は私達の方に向けないように注意してて、
たまたま照らされた先に
何かを見つけた奈良坂君が澄晴に教えて、
驚いて見ようとした澄晴が慌てて視線を逸らしていた。
それを一番後ろから眺めながら、
何となく、こんな普通じゃない出来事も
たまには悪くない、なんて思ったりして…
いいえ、嘘よ嘘っ!
ただうるさいからイラついただけだわ!
考えれば考える程1人いたたまれなくなってきて、
他の話題を探す。
あ、そういえば
そろそろ空き教室に近づいてきた。
そう思った瞬間、
示し合わせたみたいに4人が一斉に静かになった。
私一言も口に出してないのに…
この一体感本当に何なのよ!
そう思いながらも、
私も一層気配を消す事に専念した。