ひと夏の救い
ゆっくり、そろりそろりと歩いて行く。
ヘルメットを被って
懐中電灯を仕舞った木下君を先頭に、
空気がピンと張り詰めていた。
「明かりがついてるっ」
「人がいる…のか?」
「教室の電気じゃないね〜」
「えっ、なに、何がいるのさぁ…」
「人じゃなかったらなんなのよ」
「だから幽霊だよっ。幽霊の集会っ」
「空き教室の七不思議ってそんなのだったか?」
「ねぇ、澄晴。何だっけ〜」
「あぁあー、聞こえない。幽霊なんかいないー」
「ちょっと静かにしなさいよ…」
キィー!!!
ビクッと全員の肩が跳ねて、
小声の応酬が途絶える。
今の音…何…?
目配せして、頷く。
空き教室のドアの側まですり足で近づいて、
それぞれそっと耳を寄せた。