ひと夏の救い
奈良坂君、もしかして、慰めてくれたり…
「意外に可愛いところあるんだね」
半目の眠そうな顔の奈良坂君に
じっと見られながらそんな事を言われて
身体が熱くなった気がした。
してない!
からかわれた?!
ていうか、
はぁあ!?!!可愛いって何よ!
「っ、馬鹿にし…ぅぐっ」
思わず大きな声で怒鳴ろうした口を
冷たい手で塞がれる。
「しぃー、だよ。荒峰さん」
誰のせいだとっ…!
怒りと羞恥でプルプル震えてきた。
そんな私の様子を見て
面白そうに目を細める奈良坂君。
こんな手剥ぎ取って怒鳴ってやる!!
そう思ったけど
「ねぇ、今声しなかった?」
「気の所為でしょ」
「聞こえなかったよ?」
「まさか本当に幽霊いたりして〜」
きゃはは!!
空き教室の声を聞いて一気に冷静になった。
はぁ…
奈良坂君の手の中で一つ息を吐いて、
もう大丈夫って教える為にポンポンと
腕を叩いた。
それでやっと外れたその手は
奈良坂君の口元に持っていかれて、
奈良坂君の欠伸を受け止めた。
なんか、今恥ずかしい事をした気が…
ブンブン頭を振る。
今のは何も無かったことにしよう
そう、私が裾を握ったところから!
頬が熱い気がするのは夏のせいだわ
そう言い訳しながら、また空き教室のドアに耳を寄せた。