ひと夏の救い
「少し前から聞いていたけれど、
『王子』っていうのはもしかして、
すば…新井君と奈良坂君の事なのかしら?
他にもいるのか分からないけど、
そんな事はどうでもいいわ。
貴方達…同じ年のただの一般人の男の子達を
『王子』と呼ぶなんて、恥ずかしくないの?」
一瞬、澄晴と名前で呼びそうになったけれど、
もっと反感を買ってしまう気がして、
『新井君』と名字に言い直した。
すると4〜5人いる中で、
一人だけぴくりと反応した。
反応した人がくぐもった声を上げる。
「そんなの、あだ名みたいなもんよ!」
それに間髪入れずに言い返す私。
「じゃあ『王子』呼びが冗談だったとして、
さっきの話からは、
新井君達に対して夢みたいな
理想を押し付けている様にしか感じなかったわ。
それ以前に、自分が好きな相手に
受け入れてもらえないことに憤りを見せていたけれど、
そこが最も理解出来ないのよね。
まあ、
相当自分に自信がおありのようで羨ましい限りだけれど、
それを他人に強要する事が自分の価値をいかに下げるのか、
そこに至らない楽な生き方をしている事も
本当に羨ましいだものだわ。」
彼女達は皆顔を真っ赤にして私を睨み付けている。
一人だけ俯いているのは、言い返してきた彼女のようね。
ふんと鼻で笑ってやる。
一々標的を作って仲間になっている気になって
その中心はただの最低な事だなんて、
小さな生き方をしているんだもの。
あんまりにも聞き苦しくって
我慢していられなかったのよ!
…決して、けっっして!
澄晴達が危ない目に合うと思って
焦ったとか、
そういうのでは無いわよ!