ひと夏の救い
ん?というかそれより結局のところ!
「なんでこんな恰好なのよっ」
あんまりにも普通に会話するから忘れてたけれど、
今の、いわゆる『お姫様抱っこ』されている状態。
ものすっっっごく恥ずかしい!!
夢物語でしか聞いたことないもの!
顔がゆでダコみたいに
真っ赤になっちゃう!
奈良坂君にしぃーっと言われた時よりは
小さな声で抗議した。
すると、
今思い出した!
みたいな顔をした木下君が、
ははっといつもみたいに朗らかに笑った。
「荒峰が机投げられそうになってるの見て
つい加減忘れて引っ張ったら
倒れてきたから、
その流れでこうなった!」
悪びれもなく笑いかけてくる木下君。
聞いた私が悪いかもしれないけれど、
そんな事聞きたいんじゃないわ!
「は、早くおろしてちょうだいっ」
慌てたせいでちょっとうわずった声が出る。
「別に重くないから平気だぞ?」
的外れな返事が来た。
違う違う!
恥ずかしいんだってば!!
おろして!
大丈夫だ
そんな会話を何回か続けていたら、
ふわっ
突然の浮遊感が私をおそった。