ひと夏の救い
「アッキーが嫌がってるでしょ」
木下君から奪うように私を抱き上げた犯人は
澄晴だった。
驚いてその澄晴の服を掴んで
ちらりと顔をあげる。
すると、
心無しか不機嫌そうな澄晴の顔があった。
澄晴は木下君とは違って
直ぐに私を下ろしてくれた。
助かった…
いつものため息じゃなく、
私はほっと息をつく。
「何でだ?歩かなくて良いんだから楽だろう?」
「そういう事じゃないのーっ」
不思議そうにしている木下君と言い合っている
澄晴は、
さり気なく私を背中の後ろに来させた。
「……は…………から」
?
何て言ったのかしら?
ボソボソっと澄晴が呟いたけど、
よく聞こえなかった。
「…?澄晴?」
変な所で勘のいい木下君が
澄晴に問いかけたけど、
澄晴は何も無かったみたいな
明るくて軽そうな声で
「何でもなーい」
と言った。
「女の子に嫌がられることしたら
モテないんだよ〜?」
「俺はモテなくても平気だぞ?」
「だからそういうことじゃないんだってばっ」
また二人で言い合い始める。
澄晴の話はよくわからないけれど、
言い争いの内容はごくごくくだらない…
はぁ、この数分の間に目まぐるしく疲れたわ。
理解出来ないケンカ?を繰り広げる
二人を無視して
後ろを振り返ると、
呆れた顔の東雲君と
やっぱりあくびをしている奈良坂君がいた。