ひと夏の救い

「アッキーが嫌がってるでしょ」

木下君から奪うように私を抱き上げた犯人は
澄晴だった。

驚いてその澄晴の服を掴んで
ちらりと顔をあげる。

すると、
心無しか不機嫌そうな澄晴の顔があった。

澄晴は木下君とは違って
直ぐに私を下ろしてくれた。

助かった…

いつものため息じゃなく、
私はほっと息をつく。

「何でだ?歩かなくて良いんだから楽だろう?」

「そういう事じゃないのーっ」

不思議そうにしている木下君と言い合っている
澄晴は、
さり気なく私を背中の後ろに来させた。

「……は…………から」



何て言ったのかしら?

ボソボソっと澄晴が呟いたけど、
よく聞こえなかった。

「…?澄晴?」

変な所で勘のいい木下君が
澄晴に問いかけたけど、
澄晴は何も無かったみたいな
明るくて軽そうな声で
「何でもなーい」
と言った。

「女の子に嫌がられることしたら
モテないんだよ〜?」

「俺はモテなくても平気だぞ?」

「だからそういうことじゃないんだってばっ」

また二人で言い合い始める。

澄晴の話はよくわからないけれど、
言い争いの内容はごくごくくだらない…
はぁ、この数分の間に目まぐるしく疲れたわ。

理解出来ないケンカ?を繰り広げる
二人を無視して
後ろを振り返ると、
呆れた顔の東雲君と
やっぱりあくびをしている奈良坂君がいた。


< 42 / 145 >

この作品をシェア

pagetop