ひと夏の救い
4章:独りでピアノ
首を傾げながら、
ふと廊下の窓の外を見てみる。
校門に来たばかりの時は
薄暗いくらいだったのに、
今は向こう側の校舎の
影の形しか見えないくらいに真っ暗。
蝉の声は聞こえなくなって、
鈴虫の鳴き声が聞こえてくる。
窓の外を見上げれば、
所々雲に隠れた黄金色の月が覗いている。
こんなに暗い時間に
家に居ないのは初めてだな…
ちょっと不思議な気分になった。
でも、
家にいなかった所で
こんな時間じゃ
両親とも帰ってきているわけがないし。
帰ってきていたとしても、
私が家にいないと気づいて
心配なんてしてくれるわけ…
ふるふる頭を振る。
考える事を変えよう。
それにしても、
空き教室の七不思議は
最初は噂の通りだったけれど、
普通にこの学校の生徒達だったわね。
本当のところはわからないけれど、
もしかして毎日こんな時間まで
集会を行っているのかしら?
…今思い出してみたら、
黒板には夥しい数のハートマークや
人の名前___澄晴の名前も書かれた傘?
のようなものがあったし、
五十音表が書かれた紙が置いてあった。
他にも色々なものがあの教室に
常備されているような配置だったわ。
ぞわっ
背中が寒くなった気がする。
思わず腕を擦っていたら、
きらっ
と目の端に何かが映った。