ひと夏の救い
「__てワケだから、
ここから一番近いのは音楽室かな」
「音楽室は四階だったよな?」
「そうだなっ
さっきは走ってたから気にしてなかったけど、
階段も結構暗いし、
やっと夜の学校探検っぽく
なってきたよなっ」
「なんでも良いけど、ねむ…」
閉門時間を過ぎたから当たり前だけれど、
学校の照明はどこもついていない。
木下君と東雲君が懐中電灯を
つけていなければ瞬く間に
非常灯辺り以外は真っ暗になるわ。
外を見た時はちょっと綺麗とか思ったのに、
学校内に目を向けただけで一転して
不気味な雰囲気を醸し出しているのが不思議。
「それにしても、
澄晴はもう平気なのか?」
「すげー怖がってたのになっ」
「うるさいなぁ、
さっきの女の子が衝撃的すぎてなんか冷静になっただけ。
ていうか最初から怖がってないし!」
「澄晴…しぃー」
幽霊が怖いって正直に言ってしまえばいいのに。
男の子のプライドってものなのかしら?
よく分からないわね。
「う!…とにかく、
さっさと次行くよ、まこっちゃん」
「………」
「どうした?誠」
「もー、まこっちゃんてば…」
「あ、これ」
二回目に澄晴が木下君を呼びかけた時、
奈良坂君が遮って、
木下君がじっと見て動かない方向を指さした。
「あ…」
驚いて思わず声が口から漏れた。
また、あのやじるし