ひと夏の救い
「ふーん、ファッションなのか」
自分から聞いておいて興味が無くなったのかしら?
木下君は一瞬私の眼を見てから
すぐに興味を失ったように
前を向き直して歩き出した。
私に向けられていた
不思議そうな視線たちは
それに合わせて霧散する。
「嫌なら言わなくていい」
私の横を歩く東雲君がぽそりといった。
「でも、俺達は君の事をもう
友達だと思ってるんだ。
だから、溜め込みすぎる前に
俺達に吐き出してくれると嬉しい」
私の方を見ないまま
東雲君は強い目でそう言った。
「……」
私は何も言い返せない。
だって約束は出来ない。
まだ信用出来ていない。
簡単に信用できるほど素直じゃないの。
でも、
なんだか
気持ちが軽くなったような気がする。
「あ、、とぅ……」
『ありがとう』
私たちの足音しか聞こえない
静かな廊下でも聞こえないくらい、
囁きくらいに
小さな声で言ったその言葉は、
少し口端が上がっている
東雲君をみれば、
伝わったのだと分かった。