ひと夏の救い
5章:引き込むトイレ&

「で、
今のところまだ一つ目と三つ目の怪談しか
確認出来てないわけだけど、
次どうする?」

澄晴が指折り数えながら
ちらっと他の私達を見回す。

東雲君は口元に拳を当てて考えるポーズをして、
私も残る怪談のうち全てを回るのに
効率のいいルートを模索してる。

さっきまで寝ていた奈良坂君と木下君は
東雲君が叩き起してくれていて、
奈良坂君はまだぼーっとしているようだった。

木下君はあっという間にいつも通り
快活な笑顔でさっき折角松本さんが片付けたピアノを
使って遊んでいる。

猫ふんじゃったが延々に流れる中のこの状況。
…なんなのかしらね。
こういうのが『混沌《カオス》』っていうのかしら?

堪える気の無いため息が出てしまうのを自覚しているけれど、
どうにも気がぬけるわね。

まだ二個しか回収出来ていないのに、
既に濃い経験をしたわ。

なんならこのまま帰ってしまいたいくらいだけれど、
東雲君や澄晴が考えている中で言い出せるような空気でも無くて、
そっと気づかれない程度にふうとため息を着いて
落ち着かせた。



< 82 / 145 >

この作品をシェア

pagetop