ひと夏の救い
「……………なによこれ」
「これは…」
手を伸ばした先にあった黒い表紙、裏表紙の本…
と思っていたものは、実際は本ではなかった。
手に取ってみると確かに本のように分厚く、
ともすれば辞書の様にも感じる。
けれど、恐る恐る捲った1ページ目には、
でかでかとこう書かれていた。
『予知の書』
それだけならば、まぁ、言われている七不思議と関係しているし、
分からなくもない。
しかし、大事なのはその下の方。
東雲君に照らして貰ってじっと見てみると、
何やら薄く文字の形に紙が凹んでいる様子を見つけた。
眉を寄せながらじーっと見てみると、
そこに書かれていたのは…
候補⤵
〜の書系
『予言の書』『賢者の書』『未来の書』(普通過ぎ?)『予見の書』『俺の書』(これは1回鉛筆でぐしゃぐしゃに上書きされている)『呪いの書』『神の書』『星詠みの書』etc…
〜の本系
『予言の本』…(以下上記の書の部分を本に変えたものが並んでいる)
英語的な
『ミステリーブック』『ストレンジブック』『マジックブック』interesting interesting interesting…(ここで何故か英語の単語練習が続く)
カッコイイやつ
裁き、鎮魂歌、狂詩曲、十字路、悪夢、邪視、混沌etc…(楽しいのかここの部分が1番多い)
読んでいるうちにシラーっと白けた目になっていく。
これ、もしかして…
「厨二病とか、中二病とかいわれる…ただの噂だと思っていたのだけれど…まさか、本当にあるなんて」
「……」
東雲君は何故か真剣な目でそれらを読みながら、
ふむ、と納得したように頷いている。
まさか、これを面白いと感じているのかしら?
もしかして、かっこいいとかやってみたいとか、思ったりするのかしら。
自分はこういう創作的な、
詩を書いたり文を書いたりする趣味が無いのでよく分からないけれど、
思春期の歳になるとこういう事がしたくなる人が多い、という話は聞いたことがある。
私が知らないだけで、実は澄晴達にもこういう趣味が…
と考えていたら、東雲君が私の視線に気付いたのか、本のようなノートを覗いていた目があった。
「荒峰、なにか変な事考えているだろう」
口には出していないはずなのに、
考えていたことが知られているように感じる。
でも、これは変な事に入るのかしら?
それもよく分からない。
「変な事じゃないわ。ただ、貴方もこういった物に興味があるのかって思っただけよ」
「存在は知っていたが、本物を見るのが初めてだから興味はある。
だが、俺が見ていたのは内容じゃないぞ。荒峰」
「内容以外に一体何を見ていたっていうの?」
「文字だ」