ひと夏の救い
それが悪夢の始まりだった。

「無かった?」
「正確には、失くしたというか…
クラスメートが来たことに焦って慌てて突っ込んだから、
どこにやったのか全く覚えてなかった」
「そんな事ありますか?場所の検討くらい着くのではないの?」
「そのはずだったんだ。
しかし、図書室をでた直後から曖昧だったのにテスト前日までそいつらは図書室に通うし、
更にテスト期間中は図書室が開かない。
なんだかんだ二週間近く図書室に寄ることが出来なくて、
そのまま…」
「それが、その本?」
「そうだ」
「え、でもそれじゃあ」
「そうだ、俺は在学中ずっっっと探していたが、
物欲センサーとは違うだろうが、
まるでこのノートが俺から隠れているみたいに全く見つからなかった」
「学校の先生に一緒に探してもらえば良かったのでは無いですか?」
「そんなこと出来わけあるか。それで先生の方が先に見つけたら、
それこそ黒歴史だ」
「じゃあ卒業したあとは」
「忘れようと思ったが、忘れられなかった。
中身を赤の他人だろうが誰にも見られたくなかったっ。
もうとっくに見つけた誰かが処分しているかも知れない、そうも思った。
しかしいつまでも気がかりだった。
だから、いっそのことまた自分で探そうと、無ければ無いで万々歳と思って、
教員免許を取り、母校に帰ってきたわけだ」
「そうだったんですか」

じゃあ、先生が本当はこの学校に来たくなくていつも不機嫌って言うのは、噂に過ぎなかったってことなのかしら。

それにしても、すごい執念…

「そして最近になって、学校の七不思議とやらに何やら聞き覚えのありすぎる話があったものだから、
生徒に聞いてみたら尚その線が濃厚になって来た。
だから図書室の先生に頼み込んで、
理由はぼかしつつ図書室の鍵を放課後にお借りして
探していたところだったんだが…」
「そこに俺たちが来て、偶然見つけてしまったんですね」
「何年も気がかりだったものがようやく落ち着く。
だから、まあ、お前たちには感謝しているよ、ありがとう」
「お礼に、授業中寝ても成績下げないでくれないかしら」
「は?」
「何言ってるんだ荒峰!それとこれとは別だろう」「だって、私いつも執拗なくらい先生に指されるんだもの、面倒くさいのよね。
テストの点数はいつも悪くないんだから文句を言われる筋合いはないし、それに…」
「それに?」
「指されて正解する度に悔しそうな顔をするから、
いっそ無視してくれた方がお互いのためかと思って」
「ぐっ、」
「先生、そんなことをしてたんですか…」
「いや、ううん、荒峰は…隙あらば寝ようとするし、それをさせない為に指しても一瞬で答えてまた同じ格好に戻ってしまうから、どうすればいいか分からなくて、な」






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