今から、絶対にバレない嘘をつきます
『夏美、ドア開けて』
ドアの向こうから、そう言われ、私は部屋のドアを開ける。
そこには右手にお茶の入ったペットボトル、左手にはポテトチップスやチョコレートといったお菓子を持っている。
『そんなに長居をするつもりはありませんけど?』
私の言葉に、ハルは“まぁまぁ”と言いながら、部屋の中に入ってくる。
そして、部屋の隅にあるベッドに腰掛けて、近くのテーブルを引き寄せ、そこにお菓子類を散乱させた。
『相変わらず、こういうの好きね…』
私はハルが持ってきたチョコレートを一つ手に取り、そしてハルに渡す。
『…サンキュ。
そんで、なんか用?』
ハルは私からチョコレートを受け取り、その銀紙を破り捨てて、静かに頬張り、私に問いかける。
『大した用事はないよ。
ただ…ハルと気持ちよくなりたかっただけ』
私はそう言うなり、ハルが座ってるベッドに腰かける。
『…ふーん』
彼は一瞬何かを考えた素振りを見せるも、そのまま私の体をベッドに押し倒す。
私の視線に映る、ハルの顔…
意地悪く笑う、その姿はどこからどう見ても、この状況を、いやこれからの状況を楽しむ、そんな顔だ。
きっと、私しか知らない、彼。
みんなが見てる、人気者の彼、ではなくて、男の顔をした彼を知っているのは私だけ。
ハルはユックリ唇を私の唇に落としていくー…。
だから、私は目を閉じた。
そして、何度目かのキスの後、
『ハル…冬香、このネックレスに気付いたみたい…』
私は乱れた呼吸をしながら、そう、ハルに言った。
一瞬にして、ハルの顔が強張る…。
『ね、私がわざと落としていった、このネックレス。
冬香が持ってたってことは、ハル、この部屋に冬香を入れたんだね?』
『ハル、冬香のこと、本気で好きなの?』
私が何か言葉を吐けば吐くほど、ハルの顔は強張っていくー…。