今から、絶対にバレない嘘をつきます




『夏美、ドア開けて』


ドアの向こうから、そう言われ、私は部屋のドアを開ける。


そこには右手にお茶の入ったペットボトル、左手にはポテトチップスやチョコレートといったお菓子を持っている。






『そんなに長居をするつもりはありませんけど?』



私の言葉に、ハルは“まぁまぁ”と言いながら、部屋の中に入ってくる。




そして、部屋の隅にあるベッドに腰掛けて、近くのテーブルを引き寄せ、そこにお菓子類を散乱させた。






『相変わらず、こういうの好きね…』


私はハルが持ってきたチョコレートを一つ手に取り、そしてハルに渡す。







『…サンキュ。
 そんで、なんか用?』


ハルは私からチョコレートを受け取り、その銀紙を破り捨てて、静かに頬張り、私に問いかける。







『大した用事はないよ。
 ただ…ハルと気持ちよくなりたかっただけ』


私はそう言うなり、ハルが座ってるベッドに腰かける。





『…ふーん』



彼は一瞬何かを考えた素振りを見せるも、そのまま私の体をベッドに押し倒す。



私の視線に映る、ハルの顔…


意地悪く笑う、その姿はどこからどう見ても、この状況を、いやこれからの状況を楽しむ、そんな顔だ。





きっと、私しか知らない、彼。


みんなが見てる、人気者の彼、ではなくて、男の顔をした彼を知っているのは私だけ。






ハルはユックリ唇を私の唇に落としていくー…。




だから、私は目を閉じた。








そして、何度目かのキスの後、




『ハル…冬香、このネックレスに気付いたみたい…』




私は乱れた呼吸をしながら、そう、ハルに言った。





一瞬にして、ハルの顔が強張る…。








『ね、私がわざと落としていった、このネックレス。
 冬香が持ってたってことは、ハル、この部屋に冬香を入れたんだね?』






『ハル、冬香のこと、本気で好きなの?』






私が何か言葉を吐けば吐くほど、ハルの顔は強張っていくー…。








< 11 / 33 >

この作品をシェア

pagetop