ヒスイ巫女2

お返事

つぎの日
蛍や蒼のいる隊の隊員を見送った後女官の悲鳴が楼宮に響きわたった。
悲鳴を聞き駆けつけたヒスイと陸
「どうした?そんな大きな声だして」
「あ、あ、」
怯えながら悲鳴の原因を指で指す。
その場所には血だらけになっている男が倒れていた。
ヒスイは巫女の力を使いながら
「あなた大丈夫?いったいどうしたの?」
「・・ヒスイ様、隊は全滅です。助けてください。」
ヒスイはケアーを消し
ムーブメント
をつかった。
もうその場にヒスイはいない。
「おい、ヒスイ!たくっ
女官達はこの人の手当をそれと病室もあけといてくれ。これは酷い事になってそうだ。」
冷静のように見えた陸だが内心はかなり焦っていた。
悪い予感がヒスイと陸にはしていた・・・
ヒスイは隊員のいる戦場に到着した。
ヒスイは戦場を見たとたんに悲鳴をあげたくなった。
状況は最悪だった
矢に刺され血だらけの者
刀で斬られ苦しむ者
それはまるで・・・
まるで・・・地獄
人のうめき声が聞こえていた。
そして遅れてきた陸が
「ヒスイ!」
その言葉によってヒスイは陸を見つけ二人が手を合わせ治癒の力を使い人々の傷を癒す。
「「ケアー」」
ヒスイと陸の周りからピンクの光が湧き出てきた。
一人の時とはレベルが違う兄妹でちからが共鳴しあって力を高めあっていた。
二人の力はたくさんの人の傷を癒した。
だがピクリとも動かない者達もいる
亡くなっていた。
ヒスイの嫌な予感があたる事になる
「蒼!どこ!」
ヒスイは不安になって大声で蒼の名前を叫んでも返事は返って来ない
約束を信じているけど・・・
だけど最悪の事も考えてしまう。
だが最悪の事の答えは早くも見つかった
ヒスイはある少年が血だまりの上で倒れているのを見つけた。
事実を認めたくないだが
事実を認めざる得なかった
「・・・・・・蒼」
血だらけの少年の名を呼んだ未だに信じられず蒼のもとへと近づいた。
「ケアー」
ヒスイの力では瀕死の蒼を救えない。
それが頭の中では分かっている。
でもそれでも力を使い続ける。
一心不乱に力を使い続ける。壊れたように使い続ける。
認めたくない。
「・・・・・・ヒスイ」
ヒスイの力で本当の少しの時間だけ蒼の生きている時間を作る事ができた。
その声はいつも聞いている優しい声でヒスイは嬉しかっただか同時に悲しくもなった。
蒼は困ったような悲しそうな顔をしていた。
「・・・お前と一緒にいれて楽しかった」
思い出がヒスイの頭に蘇った
喧嘩した事
遊んだ事
笑った事
泣いた事
全部蒼といた。
全部が今でも宝物
蒼も思い出していたのだろう微かに蒼が笑った。
「・・・毎日が幸せで
楽しくてヒスイと
笑い会える日々が
大切だった。」
ヒスイの頬に温かさが宿る
それと同時にヒスイの力が消された。
蒼の手がヒスイの頬に触れて黒色の光をだしていた。
その手をヒスイは握った。
それがヒスイに涙を流させ力を止めていた。
「・・・もうお前を守れないごめんな・・・」
「泣くなよ」
ヒスイの涙を指で拭った。
「お前の笑ってる顔が好きだ」蒼は愛おしそうに笑った。
そして顔をなでるが蒼も涙を流している。
悔しい涙でもない嬉し涙でもない。ただ涙がこぼれていた。
ヒスイは無理やり笑おうとしたが笑えない。
涙しかでてこない・・・
蒼の為に笑いたい
蒼に時間が残されていないのをヒスイも蒼も感じていた
「・・・・・・ヒスイ・・・・・・・・・・・」最後の言葉
もう蒼には時間がなかった
だからこそ最後に何を伝えたいかを考える
今までの懺悔か
弟に向けての言葉か
それともこれから逝く場所の事か
でも何度も考えてもこれしか出てこない
ヒスイにむけての一言
たった一言
いままで伝えたくても恥ずかしくて伝えられなかった言葉
・・・・・・
「・・・愛してる」
蒼の手がヒスイから離れた。
・・・・・・・・
ヒスイは事実を認められなかった
認めたくなかった
ヒスイの瞳から大粒の涙がこぼだしていた。
蒼のもう動かなくなった身体を揺らしながら
「蒼、お願いだから
目を覚まして、
嘘だよね?約束したよね?
一生一緒にいるって
言ってたよね?
ねえ、蒼
また笑って、
また遊ぼう、
ねぇ、
蒼話しかけてよ
いつもみたいに家にかえろ
いつもみたいに・・・」
言葉がつまり感情が抑えられなくなった。
うわぁぁぁ 
わぁぁぁ
「逝かないで」
陸と蛍がヒスイの後ろで涙を流している。
「一人にしないでお願い
もう一人にしないで」
(両親を亡くしたあの日私はもう幸せなんてくるもんじゃないと思っていた。
自分の世界はこれで終わりだと思ってた。
でも恋をした真っ黒だった世界がカラフルに彩りされた
人生が楽しいものだなって思えた。
蒼のおかげでこれから先楽しみだなって思う事ができた。これからもそうなっていくと思ってた。)
「約束守ってよ
嘘つき
約束絶対に守るって言ってたのに蒼の嘘つき。
蒼、約束守ってよ…」
「蒼もっともっと一緒にいたいよ…これからもずっと…」
感謝してもしきれない。
だから受け入れられない
「蒼死なないでお願い
約束守って
一生一緒にいて」
ヒスイの言葉はもう蒼には届かない。
「蒼死なないで!
お願い死なないで
お願いだから
一生のお願いだから、そぅ…」
ただヒスイの叫びと泣き声が戦場でこだまするだけであった。
蒼19歳死去
ヒスイ13歳
大切な人を3人も亡くすには早すぎる歳であった。
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