課長の独占欲が強すぎです。
すでに先月、挨拶を済ませていたとは言えやっぱり初出勤の瞬間は緊張する。ここは4階にある営業課のフロア。私は背筋を伸ばして深呼吸すると改めて『少女漫画部門』と書かれたドアを見つめた。
大丈夫、前回挨拶に来た時には優しい人ばっかりだった。それに、同じ営業事務のベテラン女性が私の指導に着いてくれるって。だから不安なことなんて何もない。よし、頑張れ私。いざ、憧れの少女漫画部門!
そのとき、ノブに手を掛けていたドアが奥に開かれ、私は勢い余って引き連られるように入り口へとよろけてしまった。
「うわ、わ、わ、わ」
あやうく転びそうになったところに部屋から人が勢いよく出てきたもんだから、私は見事その人の懐に飛び込んでしまう。
「あだっ」
けれど、顔と身体に当たったのは想像していたのとは違う壁のような感触。思いっきり鼻を打ちつけてしまい相手を気遣うのも忘れて、じ〜んと痺れる痛みに目を瞑ってしまった。ところが。
「……お前、何をしている」
頭上からかけられた地響きのような低い声に、痛みよりも雷のような緊張感が走って背筋が無意識にピンッと伸びた。