課長の独占欲が強すぎです。

「駄目! 駄目! 絶対ダメ!! これ以上したら和泉さんとは一生口聞きません!!」

 考えてみるとなんとも子供じみた陳腐な抵抗だったのだけど、必死さは伝わったのか和泉さんは身体を離れさせこちらを不満そうに見やる。

「俺が嫌いか」

「そうじゃなくって! こんな所でその、……するなんて絶対嫌です!」

 いくら人気も無く、窓にフィルムが貼ってあるからと云ったって、車内で初体験なんてゴメンだ。たとえ最後までじゃなくったって、私にとってはそれさえも貴重な初体験なのだから、こんな場所で欲に流されるまま触られるのだって絶対に嫌。

 なのに和泉さんはこちらの事情など全く察さないから困ってしまう。

「安心しろ、今はつまみ食いだけだ」

「つまみ食いもダメ!」

 伸ばしてきた手をピシャリと払い除けるほど拒絶する私に、和泉さんはムッと口をへし曲げて更に不機嫌を露にした。

「潔癖だな。分かった、そこまで言うなら場所を変えよう。そのかわり、俺はお預けされると燃える質だからな。後でどうなっても知らんぞ」

 最後にクッと口角を上げて言った彼の言葉に、私は想像すら出来ない恐怖を覚えて気を失いそうになる。

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