課長の独占欲が強すぎです。
「しゅ、しゅ、しゅみまへん!あの、私、今日からこちらに配属しゃれた、たひばなこにゃつと言いまふ!」
鼻を押さえながら喋ったせいでとんでもない活舌になりながらも、必死に挨拶をして思いっきり頭を下げる。そして、恐る恐る顔を戻しながら正面を見上げてみれば。
「……っ!?」
思わず『でかっ!?』と口走りそうになったのを必死で押さえ込んだ。だって、目の前に対峙する男の人は山みたいに大きいんだもん。身長152センチの私が首を反らせて見上げなければ顔が見えないなんて、きっと2メートル近くある。
大きいのは身長だけじゃない、ウインドーペーン柄のスーツに包まれたガッシリとした肩幅に、広げたら私の顔より大きそうな手。ふと視線を下げれば私の胸の位置にウエストが来ている、どんだけ脚長いのっと思わず目を見張ってしまった。
とにかく、クマと見紛うほどの巨躯な男性がこちらの視界を塞ぐかのように正面にどーんと立っている。それだけでも凄まじい威圧感なのに、彼はとんでもなく不機嫌そうな表情をして私を見下ろしていた。
「あ、あ、あの……」
視線だけ上に向けて見た顔は正直おっかなかったけど、クマと形容するには失礼なぐらい端整で少しだけ驚いてしまう。
短い黒髪に凛々しい眉、少し切れ上がった意志の強そうな力のある瞳。面長な顔の中心を通る鼻は高くて、引き結ばれている唇は色気のある薄い形をしていた。