課長の独占欲が強すぎです。
「しっかり食わないと一晩もたないぞ」などと恐ろしい予言をされたけれど、私は食事にほとんど手を付けず、和泉さんと言葉も交わさないまま食事は終了した。
部屋に行ってももちろん私はだんまりを貫き通す。途中走って逃げ出そうかとも企んだけれど、捕まって抱えられて運ばれるのがオチだと分かっていたのでやめておいた。こう云うとき小柄は本当に損だ。
部屋はなかなか広く快適だったけど、私はベッドの隅っこに座って座敷童子のように動かない。
私がずっとそんな調子で居ると、和泉さんは呆れてしまったのかふいに部屋から出て行く。まさか帰っちゃったのかと一瞬焦ったものの、荷物やジャケットは置いたままだったのでそれは無いようだった。
15分ほどして戻って来ると、和泉さんはまっすぐ私の座っているベッドへ向かって歩いてきたので、思わずビクッと身体を竦ませる。
「怯えるな。俺は無理に抱いたりしない」
真剣にこちらを見据えて言った和泉さんの科白に、私は心の中で小さく納得した。確かに、キスはいつも突然されるけれど、私が本気で嫌がれば和泉さんはすぐに離れてくれる。絶対力で敵わない私に力尽くで強要するような事はしない。抱擁に関してはやや容赦ないけど。