課長の独占欲が強すぎです。

 端整だけれども威圧感たっぷりの顔で睨まれて私はたじろぎ言葉を失ってしまう。すると。

「宍尾さーん、何やってんですか? って、あれ。えーっと橘さんだよね?」

 神の助け! 巨体の後ろからヒョイと顔を覗かせた男性が私を見つけて声を掛けてくれて、心の底から安堵する。この人には見覚えがある、前回挨拶に来た時に1番親切にしてくれた東一成(あずまかずなり)主任だ。

「東さん! あの、私っ」

 思わず笑顔になってしまい、巨体を避けて部屋へ入ろうとした時。

「橘? お前が新しく配属された女子社員か」

 再び地鳴りのような声が頭上から浴びせられ、私は再び緊張で身体が固まってしまった。

「宍尾さん〜、ほら、そんなおっかない顔してたら橘さんが萎縮しちゃいますよ。橘さん、大丈夫だよ。この人顔はおっかないけど取って喰ったりはしないから」

「東、上司に向かってなんて言い草だ。それにこの顔は生まれつきだ。萎縮する方が悪い」

「……へ?」

 東さんと巨大な人の会話を聞いて自分の耳を疑う。え? 今、上司って言った? まさか……まさか?
 
 
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