課長の独占欲が強すぎです。

「……? なんですか?」

 ただ見つめてくるだけの和泉さんに小首を傾げて尋ねると、長い腕が伸びてきて私の鼻の頭をツイっと指で擦っていった。

「あ、」

 どうやら夢中で食べていた私の鼻の頭には生クリームがくっ付いてたらしい。

 自分の人差し指に掬ったそれを、和泉さんは舌を出しペロリと舐め上げる。そんな彼の姿を見て、私の頬がみるみる熱くなっていった。

 うわ、恥ずかしい。子供じゃあるまいしガッついてクリームなんか付けちゃって、私みっともない。

「す、すみません……」

 顔を俯かせ慌てて紙ナプキンで鼻を拭えば、正面の席からは和泉さんが零した大きな溜息の音が聞こえた。

 ――また、呆れられちゃった……?

 せっかく身体を結び合って彼の想いまで知る事が出来たのに、さっそく嫌われるような姿を見せてしまった自分が悲しい。

 
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