課長の独占欲が強すぎです。

 そうこうしていると、皆が入り口を振り返って口々に「おはようございます」と挨拶をした。和泉さんが出勤してきたのだ。

 「ああ、おはよう」と返す和泉さんはいつも通りで、ネイビースーツに包まれた大きな身体はやっぱり威圧感をたっぷり醸し出している。

 けれど、あの体躯がどんな風に逞しいか、どんな手触りをしてるか知ってしまった私はいつも通りとはいかず、恥ずかしくなってつい目を逸らしてしまった。

 いけない、いけない、会社なのに何考えてるんだろう。しっかりしなくちゃ。そう気持ちを立て直そうとするも、視界の隅に和泉さんが映るたび妙にドキドキしてしまう。

 初めて身体を結んだ人が同じフロアにいると云うのはなんだか恥ずかしいものだなあ、なんて熱くなってしまった頬を手で隠しながら考えていると。

「課長、今みんなでお土産交換してたとこなんですよ。橘さんのお土産美味しいですよ」

 なんと、東さんがそう言って和泉さんに向かって手招きをするではないか。

< 127 / 263 >

この作品をシェア

pagetop