課長の独占欲が強すぎです。

「それにしても、宍尾さんもようやく立ち直ったって事かな。なんか安心したよ」

「え?」

 たわいなくひとりの先輩が言った言葉に私が顔を上げると、東さんが浮かべていた笑みを一瞬で引いて「おい」とその先輩を咎める。

 それが和やかだった空気を一瞬で変えるものだという事は、他の人の表情からも伝わってきた。

「立ち直ったって……何かあったんですか?」

 恐々尋ねてみた私に、東さんが眉尻を下げた表情で笑い掛ける。

「ううん、なんでもないよ。それよりさ、宍尾さんああ見えて絶叫マシン苦手なの知ってる? 今度遊園地誘ってみるといいよ」

 あまりにも分かりやすい話題転換だったけど、悪い意味で隠すと云うよりは私か和泉さんを気遣って話を逸らしている事が東さんの様子からは伝わってきたので、私はそれ以上話題を追及することをやめた。

< 130 / 263 >

この作品をシェア

pagetop