課長の独占欲が強すぎです。
・嫉妬するほど好きみたい
*6・嫉妬するほど好きみたい*
6月のとある土曜日。私はよく晴れた川原のグラウンドで草野球をする和泉さんの応援に来ていた。
「和泉さん頑張ってー!」
夏並みに照りつける日差しの下、最初は日傘を傾けながらベンチに座っていたけれど、白熱する試合に盛り上がるギャラリーに飲み込まれ、いつの間にか私まで傘を放り立ち上がって応援に興じていた。
あまり野球は詳しくはないのだけども、和泉さんがとても有能なプレイヤーだと云う事は、敵味方の様子を見ていれば分かる。
9回裏、同点の満塁。バッターボックスに大きな身体が勇ましく立った途端、味方からは期待の声と敵側からは絶望の声が上がった。
199センチの巨体が持てば、バットでさえ小枝に見える。相手のピッチャーが祈るような表情で投げた白球を和泉さんは唸りを上げそうなフルスィングで打ち返し、カキーンと云う見事な音と共にボールは外野手の頭上を遥かに越えて行った。
「やったー! 和泉さんカッコいい!!」
絵に描いたような満塁サヨナラホームランに、和泉さんのチームは踊り出さんばかりに大喜びし、ゲームはたいそうな盛り上がりを持って終了した。