課長の独占欲が強すぎです。

***

「本日よりこちらの少女漫画部門営業課に配属されました橘小夏です。宜しくお願い致します!」

 浮かれていた気分は萎れてしまったけれど、仕事に対する情熱まで萎れた訳じゃない。例え上司が一睨みされただけで震え上がるようなおっかない人だとしても、全っ然少女漫画にそぐわない大男でも、この尊い仕事には関係ない。私の使命は大好きな少女漫画たちを、多くの人の手に取ってもらえるようにする事なんだから。

 自分に気合を入れなおして朝礼での挨拶を済ませた私は、早速自分に割り当てられたデスクへと座った。けれど、どうもさっきから気になる事がひとつある。

「まあ、基本的な仕事はどこの部署も一緒だよ。橘さんには僕らが頼んだ情報を探したり資料を作ったりして欲しいんだ。あとは来客の対応や電話の……」

「あの、ちょとすみません東主任」

 席に着いた私に業務の説明をしてくれる東さんの言葉を遮って質問してみる事にした。

「私の教育って、確か同じ営業事務の女性の方が担当されるって聞いてたんですけど……姿が見えないようなんですが今日はお休みですか?」

 そう尋ねると東さんはとっても分かりやすい苦笑いを浮かべて視線を泳がせる。ふとフロアを見渡せば、みな何処か困ったような曖昧な表情を浮かべていた。

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