課長の独占欲が強すぎです。
「本が嫌いな奴が出版社に入るか」
ごくごく真っ当な答えが返ってきたけれど、それは私だって分かっている。和泉さんはその中でもかなりの本好きだと言っているのだ。
「それはそうですけど。でも、そんなに好きなら和泉さん、営業より編集の方が良かったんじゃないですか」
それは別に深い意味もなく、ただなんとなく口に出しただけの言葉だった。けれど、和泉さんから何も返って来なかったので不思議に思い、私は手元のお皿から視線を向かいの席へと移す。
「和泉さん?」
「……俺は編集より営業の方が向いている」
和泉さんはそれだけ言うと、グラスのビールを飲み干して椅子から立ち上がった。
冷蔵庫に新しいビールを取りに行っただけだったけど、私には何だかその話題を続けるなと言われてる気がして、言葉を噤んだまま黙々と食事を再開させた。