課長の独占欲が強すぎです。
「実は君の教育担当するはずだった女性社員の人ね、昨日の帰り道で階段から落ちて入院しちゃったんだよ。足をポッキリやっちゃって全治6ヶ月だって」
「えっ! それは大変ですね……ん? って事は……」
「そう、うちの女性社員、及び営業事務は今日から橘さんひとりって事」
「ええええ!?」
な、なんて事だろう。営業とは言え少女漫画部門に女性社員が私だけなんて。あれだけ燃えていたやる気がモヤモヤと不安に覆われていく。
「まあ大丈夫だよ。今までも営業事務はひとりだけだったし。うちはみんな、わりと自分で資料や宣材作ったりするしね。橘さんの負担はそんなに大きくないから」
確かに、仕事だから環境が嫌とか女性一人じゃ嫌なんて甘えた事は言ってられないけれど……でも、想像していた状況と色々違いすぎて、私の心は薔薇色の『よーし、やるぞ!』から、ダークブルーな『やっていけるかなあ』に変わってきていた。
***
午前の仕事は東さんが取引先や業者の説明をしてくれたり、今引き継いでもらいたい仕事の内容等を教えてくれた。
「とりあえずこれで午後からは業務に当たれるかな。分からない事があったら誰でもいいから捕まえて聞いてね」
一通りの説明が済んで東さんがそう結んだとき、丁度お昼のチャイムが鳴った。