課長の独占欲が強すぎです。
それは分かりきっていた返事なのに、私の胸がモヤモヤと曇る。
これから月に何回かは必ず有栖川栞の名前を和泉さんは目にするのだ。ふたりの過去に何があったかは知らない。けれど、その度に和泉さんは何を思うのだろう。
そんな馬鹿みたいな事を考えては勝手に気分を暗くしてしまった。
「……橘さん。今日のお昼、『モーリー』じゃなく公園で食べない?」
「え?」
東主任に唐突に昼食の話を振られて、私は目をぱちくりさせる。
「ほら、どうせ今日も宍尾課長は昼会議でいないしさ。天気もいいしたまには外でランチってのもいいかと思って」
そう言う東さんの声は明るくて、きっと隠してるつもりだった私の落ち込みに気付いて誘ってくれたのだと分かった。
「そう……ですね。外で食べるのも気持ちいいかも」
彼の励ましに応えるよう、笑顔を作って頷く。
自分でも手に余っていた憂鬱を、気分転換できればいいなと思い東さんの誘いに快諾した。