課長の独占欲が強すぎです。

 この部屋は12畳とかなり広くて、寝室とクローゼット、それに書斎を兼ねている。

 私の動きを止めたのは書斎スペースにあるデスクだった。


「……有栖川栞……」

 ダークブラウンの天板の上に積まれた数冊の本。それは全て著者名に有栖川栞と書かれている。

 例の文芸賞を取った作品から、その後に発行したもの。単行本に文庫、今年出た最新刊まで。

 私は何も考えられないままそこにある本を一冊手に取った。

 東さんから話を聞いて気持ちの整理は付いたはずだった。もう悩まないって。落ち込まないって。

 なのに、彼女を思わせる儚げな白と青の表紙を見ていると不安で胸が騒つく。

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