課長の独占欲が強すぎです。
「有栖川さんの希望なんですよね? 昔担当編集者だった和泉さんを戻して欲しいって。有栖川さんは……天才です。和泉さんは出版に携わるものとして、本当は彼女を手助けしたいと思ってるんじゃないですか?」
不安が堰を切ったせいで、責めたてるように言ってしまった。そんな私を見て和泉さんは大きな溜息を吐き出す。
「誰かに聞いたのか。俺が彼女の担当だった話を」
「……すみません……」
「どうせ東あたりだろう。お喋りな奴め」
機嫌を損ねてしまったようで、和泉さんは眉間に皺を寄せた。どうしよう、怒らせてしまったと気持ちが焦ったとき。
「んぐっ」
和泉さんの長い指が、私の鼻をつまんだ。