課長の独占欲が強すぎです。

「こんな所にいたのか」

 椅子に座っていた私の上に大きな影が落ちた。

「和泉さん」

 顔を上げれば、ドリンクをふたつ手にして私を見やる和泉さんが。

 ピークドラペルのグレースーツにグリーンのレジメンタルタイがいつもよりクラシカルな雰囲気で、なんだか大人っぽく見える。

「お疲れ様です。もう得意先のご挨拶とかはいいんですか?」

「大方済んだ。東もそのうち戻ってくるだろう」

 差し出されたシャンパンの入ってるグラスを立ち上がって受け取り、和泉さんと小さく「お疲れ様」の乾杯を交わして口をつけた。

< 204 / 263 >

この作品をシェア

pagetop