課長の独占欲が強すぎです。

「まーたやってる。文芸の編集長まで巻き込んでよくやるよなあ」

 呆然と和泉さんたちを見つめていると、隣に立っていたグループの会話が耳に入った。横目で見やれば、どうやら『レジーナ』の編集部の面々らしい。

「仕方ないわよ。有栖川さん、もう原稿遅れてるんでしょう? あれだけ大々的に宣伝しておいてたった3回で休載なんて冗談じゃないもの。編集長も必死よ。有栖川さんが書いてくれるなら宍尾さんに土下座だってするわよ」

「宍尾課長も強情だよなあ。なんか昔色々あったらしいけど、『レジーナ』のためにひとつ折れてくれればいいのに」

 知りたくないのに聞こえてしまう会話から逃げるように、私はその場から小走りで立ち去った。



 会場の外に出てトイレに駆け込むと、中は誰も居なく静まり返っていて、私はそこで大きく息をつく。

 見なければ良かった、あんな光景。

 和泉さんが安心させてくれたとは言え、現行問題は続いているんだ。その事を強烈に痛感した。

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