課長の独占欲が強すぎです。

 彼女が泣いていた理由は間違いなく宍尾さんの事だろう。そう考えると私はこれ以上関わるべきではないと分かってはいるのだけれど。

 涙を拭った有栖川さんが

「失礼ですが、さっき宍尾さんと一緒におられた方ですよね。もしかして彼と同じ課の方でしょうか」

と尋ねてきた質問に、私は躊躇いながらも頷いてしまった。

「少しだけ……お話いいですか?」

 弱々しい笑顔を向けられ逸らす事の出来なくなってしまった私は、洗面台の前で彼女と向き合う。

 何を話されるんだろうと緊張で心臓が痛い。けれど、有栖川さんは私が和泉さんの恋人だと知らないからか、これっぽっちも敵視することなく純粋な眼差しを送ってきた。

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