課長の独占欲が強すぎです。

「宍尾さんは今の課……営業課では、どんな風に働いてられるんですか?」

 好奇心のような意外な質問に内心驚いてしまう。その質問の真意がよく分からないまま、私は少し迷いながら答えた。

「どんな風にって……えっと、すごく仕事熱心で真面目な上司だと思います。厳しいところもあるけど、でも部下のことを凄く大切にしてくれて……ちゃんとみんなに気を配ってくれて、ぶっきらぼうだけど優しくて。みんな宍尾課長のこと大好きで、尊敬してます」

 なんだか小学生の感想みたいになってしまったけれど、それは恋人の贔屓目抜きに部下として宍尾課長に抱く素直な気持ちだった。

 私の稚拙な感想を聞いた有栖川さんは何処か嬉しそうに目を細めて口を開く。

「宍尾さんらしいですね。仕事熱心で厳しいのもぶっきらぼうなのも相変わらず。でも……ちょっと羨ましいかな。私の時には大切にしてくれる余裕はなかったから」

 そして、微笑むように細められていた目から、一筋の涙が零れていった。

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