課長の独占欲が強すぎです。
女は面倒だ。いちいち気持ちを察してやったり、こっちの考えてる事を逐一説明してやらなければならない。
男と女の駆け引きだのなんだの、苦手な事この上ない。ゴチャゴチャとした女の心理に比べたらエリクソンやフロイトのなんと簡潔なことか。
俺にとってはそれほど労力のいる事だ。他を差し置いてそこまで尽くしたい女がいるのなら別だが、あいにくそんな相手に出会ったことが無い。
「まあ、社会に出て夢中になれる女に出会える事を祈っとくよ」
悟志はそう言って缶ビールを煽りながら俺の肩を励ますように叩いた。余計なお世話だ。
——もっとも。もしかしたら俺はそんな相手に……それほどまでに惚れ込める相手に出会えるのを、心のどこかで待っていたのかもしれないが。