課長の独占欲が強すぎです。
「童謡なのに夢が無いなあ。二度目のラッキーは無いよって、子供に現実の厳しさを教える歌か?」
「鍬を捨てるなって事だろ。自分の本分を忘れるなって戒めだよ」
たかがCMで流れた童謡からやけに真面目な議論に発展していく。俺は手元の缶ビールを飲み干し、少し考えてみてからそれに参加した。
「俺なら猟師になるな」
「は?」
友人たちが一斉に不思議そうな声を出してこちらを見る。
「鍬を捨てるほどウサギが美味かったんだろう。ならばこれからは待ちぼうけていないでウサギを捕まえに行けばいい。全力でな」
野球にサッカー、バレーボール、バスケットボール、アメフトと、数多もの真剣勝負を何度も潜り抜けてきた俺には分かる。
偶然のチャンスと云うのはそうそう来ない。来たとしてもせいぜい1回こっきりで、その後チャンスを作れるかどうかは自分の努力次第だ。
ウサギが自ら転げてくるのは1回だけだ。ならば後は銃を取れ。自分の足で追いかければいい。