課長の独占欲が強すぎです。
真剣に自論を展開すると数人があっけに取られ、数人が感心をし、そして悟志だけが声をあげて笑った。
「何が可笑しい」
俺は再びムッと口をへし曲げたが、悟志は臆することなくバシバシと肩を叩いて上機嫌に言う。
「すごく和泉らしいよ。俺、お前のそういうところ大好きだ」
あまり嬉しい表現方法ではないが、奴なりの賛辞なのだろう。長年の付き合いだから分かる。
「狙った獲物は逃がさない、か。お前は人一倍不器用な分、そんぐらい強引でいいのかもな。まあ猟師ってよりは獲物を狙うクマって感じだけど」
「誰がクマだ」
友人とそんな和やかなやりとりをしたのも、もう10年も昔になる。
その間、俺の木の根に転ぶウサギは、残念ながら1匹も訪れる事は無かった。