課長の独占欲が強すぎです。

「おはようございます、課長。今日から新しい事務の子が来るから、万が一待たせちゃ可哀想かと思って早めに来たんですよ」

 東はそう言って、今日から配属される事務員のデスクを整えてやっていた。

 全くこの男はよく気が利く。俺とは正反対な性格をしている。

 だからこそ、東が自分の片腕である事がありがたい。お互いが補い合える上司と部下という関係がとてもしっくり来るのだ。

 だがもしも、こいつが部下でなく敵対する立場だったらと思うと、なかなかゾッとしない話だ。

 器用で気配りが上手い東のようなタイプは、俺がもっとも苦手とするライバルになるだろう。つくづくこいつが部下で良かったと思う。

「そう言えば、課長はまだ橘さんに会ってないんですよね」

「ああ。だが別に構わんだろ。どうせこれから毎日顔を合わせることになるんだからな」

「……いやあ、そういう問題じゃないっていうか。橘さんビックリしちゃうんじゃないかなあって」

 困ったように笑いながら東は何かゴニョゴニョと言っていたが、俺はさして気にも留めず自分のデスクでパソコンを開いた。
 
< 257 / 263 >

この作品をシェア

pagetop