課長の独占欲が強すぎです。
「ちょっと総務に書類を取りに行って来る」
東に言い残し席を立った俺はフロアの出入り口へ向かう。
閉まっている扉のノブに手を掛け、いつものように勢い良く引いた瞬間だった。
「うわ、わ、わ、わ」
ドアにしては重い感触と共に、間の抜けた声が一緒に入ってくる。
——そしてそれは転げるように、俺の懐へと飛び込んで来た。
小さな小さな体躯。軽くて柔らかい感触。栗色のふんわりとした髪。そして。
「あだっ」
俺の胸板にしたたかに鼻をぶつけ、更に間抜けな声をあげた顔がこちらを見上げる。
黒目がちなクリクリとした瞳がパチクリと俺を映し、その瞬間——
——俺は恋に落ちた。