課長の独占欲が強すぎです。
「和泉さんって高校生のとき何部だったんですか?」
オーダーした商品のトレーを持って空いている席に座ると、私はさっきの会話の続きを始めた。ちなみに、ポテト二十人前の話を聞いただけで胸やけしてしまったので、私のトレーにはストロベリーシェイクしか乗っていない。
「バスケ部だったがサッカー部とバレー部の練習試合にも駆り出されてたから、兼任してたようなもんだったな」
これまたワイルドな。
彼の身体能力を考えれば引く手数多なのは理解出来るけど、相変わらずエネルギーが常人離れしている。
「はー……。すっごいですね。和泉さんの高校って有名な進学校でしたよね。それだけ部活やってて、よく学業と両立出来ましたね……」
「若かったからな。あの頃はメシさえ食えば何でも出来る気がしてた。十代ってのはエネルギーが有り余ってるもんだ」
私は女子なので分からない部分もあるけれど、でも多分それは一般論じゃない。ご飯はそこまで万能じゃないし、十代はそこまで不死身じゃない。
「まあ、何をしてても楽しかったってのもある。部活も勉強もとにかく夢中だったな」
ポテトをつまみながらそう語る和泉さんの表情は、どこか懐かしそうだ。ふと奥の席の高校生を眺める視線は穏やかで優しい。それだけで、彼がきっと悔いのない青春時代を送ってきたことが窺える。
——なんか……カッコいいな。
初めて見る彼のそんな表情にうっかり見惚れていると、ふいにジッとこちらを見つめられた。いきなりマジマジと視線を送られてしまい焦っていると。
「今も昔以上に充実してるけどな。仕事も楽しいし、なんてたってお前がいる」
フッと笑みを浮かべてそんなことを言われてしまい、私の顔はみるみる赤くなっていくのだった。