課長の独占欲が強すぎです。
「す、すみません課長! 今離れますから!」
焦りながら腕を突っぱねてヨイショと自分の身体を引き離そうとするも、今度はブレーキの衝動で危うく前のめりになりそうになる。
すると、運転席にぶつかりそうになった私を宍尾さんの腕が抱えるようにして抑えてくれていた。
「あ……ありがとうございます」
連続で男性の身体に密着してしまう事態となり、掌に汗が滲むのが分かる。顔もきっと真っ赤だ、頬が熱い。
「コロコロとよく転がるヤツだな」
宍尾さんはそんな風に言って手を離したけれど、僅かに眉を顰めていた事に気付いて私は気持ちがシュンと落ち込んでしまった。
きっと呆れてるんだ、たかがタクシーでまともに座ってられない奴だって。
だって仕方ないのに。このタクシー、後部のシートベルトが腰ベルトしかないタイプだし、運転もちょっと乱暴だし。それに私だって転がりたくて転がってるんじゃないんだから。
理不尽に呆れられた気がして無意識に拗ねた表情が出てしまった所で、タクシーはようやくお店の前に着き私たちはこの窮屈な空間から降りることが出来た。