課長の独占欲が強すぎです。

「課長さんって随分大きな人ねえ。チャイムが鳴ってドアを開けたら山みたいな人が立ってるんだもの、ビックリしちゃった。でもすっごく丁寧だったわよ〜『ご息女をこんなに酔わせてしまって申し訳ありません。上司であるところの私の責任です』って。小夏のコトこんな風に軽々と抱えちゃって」

 そう言ってお母さんは膝の上の兎をヒョイッとお姫様抱っこした。突然抱きかかえられて驚いたミロちゃんがジタバタと腕から抜け出そうとしている。

「逞しいし丁寧だしでいい課長さんだわねえ。ほら、顔もちょっとあの人に似てるし。俳優のなんだっけ、よく医療ドラマに出る人」

 無駄に広がっていきそうな母のトークを耳からすり抜けさせながら、私は次々に明かされる事実にもはや抜け殻の如く呆然と立ち尽くすだけだった。

***

「金曜日は本当にどうもすみませんでした!!」

 月曜日、皆へと宍尾さん個人へとお詫びのお菓子を持って出社した私は、米つきバッタの如くペコペコと頭を下げて回った。

 東さん始め先輩方はみんな「無理に飲ませたこっちが悪いんだから」と笑ってくれたので少しだけ安心したものの、それでも年頃の女子が醜態を晒したと云う事実が消えるわけではない。

 最後に宍尾さんのデスクへ行って1番深く頭を下げたけれど、彼はいつものように愛想の無い表情で私を見やるばかりで、差し出したお菓子の箱を受け取ろうとはしなかった。

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