課長の独占欲が強すぎです。
「それが終わってからでいいから、この書店の客層について調べておいてくれ。過去の売り上げや周辺環境、なんでもいい。出来る所までで構わないからリサーチを作っておいて欲しい」
「分かりました」
私の手がビショビショなのを察してか、宍尾さんは書類を手渡さず近くにあったワゴンの上に置いた。
てっきりそのまま立ち去るかと思いきや、彼はこちらを向いたままジッと微動だにしない。まだ何かあるのかと思い小首を傾げると、宍尾さんは突拍子も無い話を始めた。
「お前は兎を飼っているのか?」
「へ?」
いきなり脈絡も無い話題を振られて一瞬キョトンとしてしまったけれど、すぐに頭にはペットの愛兎ミロちゃんの姿が浮かぶ。
「あー……えっと、飼ってます。ネザーランドドワーフって種類の子を……」
「お前を家に送った時、玄関に親御さんと一緒に出迎えていた」
ああ、なるほど。それが言いたかったのかと納得したけれど、まさか宍尾さんが兎の事を話題にするなんて意外で、顔に出さないように気を付けつつ内心ビックリしてしまった。
けれど、更なるビックリ事態が私の目の前で起こる。