課長の独占欲が強すぎです。

「小さくて橘に良く似ているな」

 そう言って宍尾さんは柔らかに目を細めて笑ったのだ。クスクスと可笑しそうな笑い声までたてて、あのおっかないヒグマのような宍尾さんが!

 この部署に配属されておよそ半月。初めて見た上司の笑顔は信じられないくらい優しそうで愛らしかった。もし初日からこの笑顔が見られていたならば、私の中の彼の印象は180度変わっていただろう。

 ポカンとしてしまったけれど、我に返って表情を取り繕いこちらも笑顔を浮かべる。

「可愛いですよ、兎。人懐っこくて。宍尾課長は何かペットとか飼ってるんですか?」

「いや、動物は飼った事が無い」

「ひとり暮らしでしたっけ? 何か飼えばいいのに、気分が和みますよ」

「牛や馬ならともかく、猫だとか鳥だとかは小さくて恐くてな。飼う気がおきない」

 小さくて恐い? 意図の掴みづらい言葉に疑問の目を向けると、宍尾さんは自分の掌にジッと視線を落として話を続けた。

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