課長の独占欲が強すぎです。

「華奢で壊れそうなものは触れるのが恐い。俺は器用にも繊細にも出来てないんでな」

 その科白を聞いて、私の頭の隅っこに何かが通り抜けていった。春の夜風が桜の花弁を連れて吹きぬけるように、どこか胸がキュッと苦しくなる何かが。

「そんな……考えすぎですよ。動物だってそんなヤワじゃないですから。意図的に乱暴にしなければ、傷つけたりしませんよ」

 何故だろう騒つく胸を押さえながら言葉を返せば、宍尾さんはどこか安堵したような表情を浮かべ「そうか」とだけ呟いた。

 そのまま給湯室を出て行く大きな背中を見て、私は背負われて桜並木を通った夜の事を少しだけ思い出す。酔っ払った私が落ちないように支えてくれてた手は、頼もしくてひたすらに優しかったのに、と。

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