課長の独占欲が強すぎです。
給湯室から出ると廊下にいた東さんと目が合った。確かキャンペーンの推進をしに得意先を回ってきたところだ。
「おかえりなさい、お疲れ様でした」と声を掛けると、東さんは表情を崩し「どうも」と片手を上げる。
東さんが進めているキャンペーンは私の好きな漫画雑誌の記念周年フェアなので、生意気にも進捗状態が気になっていた。
「どうでした? 上手くいきそうですか?」
つい尋ねてしまった私に、東さんは「うーん」と唸って腕組をすると口を引き結んで考える素振りを見せる。ポジティブな主任がこんな反応をするのは珍しいので、非常に焦ってしまった。
「どうしたんですか? 上手くいってないんですか?」
「思わぬライバル出現……ってとこかな。モタモタしてられないってちょっと焦ってるところ」
「えっ、他の出版社のフェアと被っちゃったんですか? それは困りましたね」