課長の独占欲が強すぎです。
それから、なおも食い下がる和泉さんに根負けして、私はこれといった波乱もない学生時代のエピソードを懇々と語らされた。
それを飽きもせずじっと耳を傾けていた和泉さんだけど、私の『高一のときクラスで一番上履きのサイズが小さかった』エピソードを聞き終わると、急に改まって口を開いた。
「彼氏はいなかったのか」
「いませんでしたよ」
あやうく彼の盛大な嫉妬心に火が着きそうな話題だったけど、実際いなかったのだからセーフだ。しかし和泉さんはアイスコーヒーを飲みながら怪訝な表情を変えない。
「そんなに可愛かったならモテないはずがないだろう」
私の話した平凡エピソードにモテるほど可愛い要素などあっただろうか。はなはだ疑問だがそれはさておき、彼の業火のような嫉妬心に着火しないよう言葉を選んで答える。
「そりゃ人並みに告白ぐらいはされたけど、絶対和泉さんより少ない自信があります」
それは絶対だ。むしろ和泉さんの方が学生の頃からモッテモテだったはずだ。第一印象はちょっと怖くて愛想もないけれど、文武両道のイケメンが女の子に放って置かれる訳がない。
「俺のことはどうでもいい。何人に告白されたか教えろ」
あ、なんかズルい。
自分のことはサクッと棚上げしたな、と思いつつ、またも過去の記憶を一生懸命遡る。
「高校の三年間で……五人……かなあ」
果たしてこれが平均より上か下かは不明だけど、一応共学で、一応人並みにお洒落や女子力を磨いた結果である。なんかちょっと悲しくなってきた。